名曲がちりばめられた、56の楽章からなる音楽小説。 【試し読みあり】
語り部ラフィク・シャミも愛する作家セシェ、『囀(さえず)る魚』に続く第3弾は音楽小説。
砂漠をさまよい、瀕死の状態でマスクラン村にたどりついた男、セリム。
イブラヒム翁の介抱で目を覚ました彼は少しずつ身の上を語り始める。
森で聴いたヴァイオリンの音色に心魅かれ、アリフ老人に夢中で手ほどきを受けた少年時代、美しい娘ミリアムとの初恋。
そんな日々をよそに、楽園のようだった島国シラケシュはいつしか全体主義の国へと変貌し、独裁政権によって人々は抑圧されていく。
恋人は反政府活動をしていた祖父と亡命を余儀なくされ、恩師は自身の演奏によって命を奪われる。
放浪しながら己の道を模索するセリムの演奏には、少しずつ変化があらわれていた。
十七年のときをへて、ついに自分の魂をぶつけるにふさわしいサン=サーンスの名曲を見出したセリムに、命を賭した演奏の晩が訪れる。
サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』や、パガニーニのソナタ、サン=サーンスの『死の舞踏』などの名曲がちりばめられた、56の楽章からなる音楽小説。
※常用漢字使用 ※ふりがな / 学年規定せず付与
試し読み
名曲が聞こえてくるような文章をお楽しみください
『蟬の交響詩/第3楽章から第4楽章冒頭まで/PDF』
●全国学校図書館協議会選定 第51回夏休みの本(緑陰図書)
高等学校対象の8点のうちの1点として選ばれました。
主なメディア紹介
●音楽の友「新刊書評」 長井進之介氏 2018年6月発売
●BOOKMARK 特集「Listen to Books!」 酒寄進一氏 2018年春号
著
アンドレアス・セシェ(Andreas Séché)
1968年、ドイツのラーティンゲン生まれ。大学で政治学、法学、メディア学を学ぶ。ジャーナリストであり、新聞社で働いた経験がある。ミュンヘンの科学雑誌の編集者を数年間つとめた後、デュッセルドルフ近郊にある故郷へ戻り、パートナーと田舎に暮らしながら小説を書いている。日本を頻繁に旅行し、東京、京都、日本文化に魅了される。作品は本書のほかに、『囀(さえず)る魚』『ナミコとささやき声』(小社刊行)がある。
●HPサイトをご自身で作成されています。ぜひご覧ください
https://www.andreas-seche.de/aktuelles
訳
酒寄進一(さかより しんいち)
1958年茨城県生まれ。和光大学教授・ドイツ文学翻訳家。
主な訳書にシーラッハ『犯罪』『罪悪』『コリーニ事件』『禁忌』『カールの降誕祭』、ノイハウス『白雪姫には死んでもらう』、グルーバー『月の夜は暗く』、ギルバース『ゲルマニア』、マイヤー『魔人の地』、イーザウ『盗まれた記憶の博物館』、ヘッセ『デーミアン』、セシェ『囀る魚』など。